今回ラブピの本棚から紹介するのは、
数々の賞を受賞し、世界中で絶賛されたYAコミック作品! カナダ出身の作家マリコ・タマキ作、ジリアン・タマキ画『THIS ONE SUMMER』
毎年湖岸の別荘地で過ごす夏休み。思春期を迎えつつある主人公ローズの変化を描いたグラフィック・ノベル。
母への反発。恋やセックスへの興味と嫌悪感。無邪気なからかいや批判的態度。
のどかな日常でも、ふとこの日常が全てだと感じて息苦しくなったり…
「そうだった!!幼いって苦しいんだった~!!」
と当時を鮮明に思い出す作品でした。
その頃私が見ていた映画や漫画の中にはキラキラしたいわゆる青春が詰まっていて、若さ=楽しいって印象を受ける作品が多かったと思います。
『THIS ONE SUMMER』にはキラキラだけじゃない。たくさんの人が多分あの頃感じていたであろうキツさが含まれています。
物語全体が夏の休暇をあるまま切り取っているように進んでいきます。
ノスタルジックな雰囲気と同時に鬱屈とした空気感を感じる濃紺色の滑らかな線で描かれる絵。見落としてしまうようなとても繊細な描写が言葉ではなく登場人物たちの表情に込められています。
毎年同じ別荘地で過ごす一歳半年下のウィンディの言動や行動が少し子供っぽく見えてしまって一緒にいるのを恥ずかしく感じているローズ。
挑発するように性的な話をする街の若者たち。
大人への冷めた目線。
自意識によって傷つき傷つけるローズの姿に当時を思い出して息が詰まるような気持ちになる場面もあるかもしれませんが、最後には「それでもいいよ」とあの頃の不甲斐なさをまるっと包んでくれるようなやさしい作品でした。
思春期を迎えつつある主人公ローズの変化の時期を描いたグラフィック・ノベル。
ぜひラブピの本棚にお立ち寄りの際は手に取ってみてください。
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